秘密の地図を描こう
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メールをチェックすると同時に、キラのそれに気づく。
「……キラさん?」
いったい何を、と思いながら、レイは慌ててそれを開いた。そのまま、一息に内容を読み取る。
「……アスラン・ザラが?」
だが、すぐに彼の表情は曇った。
「何を考えているんだ、あの男は」
そして、こうはき出す。
「どちらにしろ、隊長と相談だな」
シンの反応が怖い、とため息をついてしまう。
「それにしても、キラは本当に人がいい。あいつのことなんて放っておけばいいのに」
自分のことだけを考えていてもいいのではないか。もっとも、そうできないからキラはキラなのだが。
「いざとなれば、シンをけしかけるか」
そうすれば、アスランを制止できるだろう。その間に対策をとってしまえばいい。
「ともかく、隊長を探さないと」
言葉とともに立ち上がる。
「しかし、事前にわかったのだけはプラスかもしれないな」
事前に対策がとれるか、と呟く。
「しかし、ギルも何を考えているのか」
後で文句を言わないとだめだろうな、と付け加える。
「それに関してはラウと相談してからだな」
きっと、彼も怒りを感じているはずだ。当然、ギルバートにそれなりの報復をしようと考えているに決まっている。あるいは、自分が考えているよりももっときついものを、だろうか。
どちらにしろ、一人で突っ走るよりはマシだろう。
「憂さ晴らしにもなるでしょうしね」
いろいろな意味で、と呟く。そのまま、部屋の外へと出た。
同じ頃、ミゲルは本気で頭を抱えていた。
「頼むから、これ以上、厄介事を押しつけないでくれ」
本気で手に余る、と口にする。
「元クルーゼ隊の誰か、と言うなら、ニコルだろうとイザークだろうといるだろうが」
それなのに、何故、自分なのか。
「まさかと思うが、厄介事は全部俺に押しつければいいなんて考えてないだろうな」
十分にあり得る、と思わず呟いてしまう。その場合、黒幕はニコルではないか。
「俺だってなぁ、本音を言えば、キラの護衛の方がいいに決まってるだろう」
少なくとも、ここのお子様よりは手がかからないに決まっている。
しかし、命令である以上、何とかしないといけないのだろう。
「全く……引き込んだ人間が責任持てよな」
無駄だとはわかっていても、愚痴ぐらいはいていないとやっていられない。そう心の中で呟いたときだ。
『アイマン隊長、よろしいでしょうか』
端末からレイが入室を求める声が響いてくる。
あるいは、彼も別ルートから情報を仕入れたのだろうか。
「ちょうどいい。あいつも巻き込むか」
そうすれば、少なくともシンの暴走は何とかなるかもしれない。いや、シンをアスランに押しつけて自分達はまじめに任務をこなした方がいいだろうか。
「しかし、それはそれで怖いことになりそうだな」
口の中だけでそうはき出しながらドアのロックを外す。
「失礼します」
即座にレイが足を踏み入れてきた。
「キラさんから伝言が届いたのですが」
ドアが閉まるよりも先に彼はそう言う。
「キラから? なんだって?」
あちらから連絡が来るとは思っていたが……と心の中で呟きながら聞き返す。
「とりあえず、オーブに逃げ帰らない程度でよろしく、だそうです」
必要なら、自分も動くから……と言っていた。レイはそう続ける。
「あいつも、妙なところでまめだよな」
放っておけばいいものを、と呟いてしまう。
「自分もそう思いますが……キラさんですから」
「確かに、キラだからな」
とりあえず、彼が使い物になることを祈ろうか……と口にしてしまうミゲルだった。